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小川村の昔話(狐火:狐の提灯行列)

狐火:狐の提灯行列

これは昔話ではなく実話です。
今七十才を過ぎた人は大がいは実際にみたことのある事です。

夜のこと、向うの山の中腹を、「チャカ、チャカ、チャカ、チャカ」消えたりついたり、
ついたり消えたり、にぎやかな提灯行列が左の方へ進むと思うと、また右の方へ進み、
チャカ、チャカ、消えたり付いたりするのです。

家の者が庭へ用事に出たひょうしに、この火を見付けると、家のものを呼び出して、皆でこの火を眺めたものです。
狐火とも、狐の嫁入りの提灯行列ともいいました。
遠くにその火が見える時に、狐はすぐ足もとへ来ているものだと年寄りに話して聞かされたものです。
一体、科学的に考えれば、この火は何でしょうか。

(1)錯覚(あやまって感じること)か?決してそうではありません。
同じ時刻に同じ場所に、何人かの人が見ているのです。それでは

(2)狐が骨をくわえてとび歩き、その骨の中の燐の光ではないか?
それにしては消えたりついたり点滅するからどうもそうでもなさそうです。またある人は

(3)狐の交尾期ではないか?といいましたが、どうやらこれが正しいようです。
猫のせ中を撫でると電気がおきて、パチ、パチと音と光を発します。狐が交尾期になって、
追いつ、追われつ右往左往してジャレ合うとき、すれ合って電気がおこり、それが放電して
チャカ、チャカ光り、空気中で屈折して、あのように見える。というのがどうやら理にかなった解釈のようです。

近年は狐もいなくなって、コーン・コンという狐のなき声も聞こえなくなりましたし、狐火を見ることもなくなりました。

(松本史 明治三十六年生れ)

出典:小川村誌[昭和50年(1975)10月15日発行]

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