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小川村の昔話(竜宮岩の仙人)

竜宮岩の仙人

県道長野大町線の初引から北西へ歩いておよそ三十分、鰐口部落の下から西へさらに二十分程登ると、小日向山と大平山のあわさるところに竜宮岩と呼ばれる大きな岩があって、そこに大きな洞穴がある。
昔、竜神が住んでいたという。その下にとんび岩があり、とんびが羽を広げた形ににている。
またそこには姫が滝があって竜神がときどき美女となり、滝に打たれて水あびをしていたという。
その滝も弘化の地震で変り、今は僅かにその名を残すのみになった。

昔、沢入の砂畑の青木法元という僧が、竜宮岩のほら穴で行をしていた。
そのまた昔、この穴には仙人が住んでいたそうな。
入口は小さいが中へ入るとたたみ三十畳敷きぐらいの広さがあって、その穴は長く美麻村の切石までもつづいていたとさ。
中へ入ると神気がただよい、ひやっとしたもんだ。

このほら穴の仙人は、鰐口村の人たちには、どんなむずかしい相談ごともなんとかしてくれたとさ。
「仙人様、おらあ村の相談にのっておくりゃれ。おしえておくんなすって。」と相談ごとをたのんで、つぎの日行くとお告げがあっていろいろ教えてくれたとさ。
村に婚礼や葬式の大よりいのあるときは、輪島の膳や椀などを借りに行くと、次の日に必ず出しておいて貸してくれたとさ。
村のしゅうは大喜びで、竜宮岩の仙人といって神様のように思いこんであがめていたとさ。

あるとき婚礼があって、そのとき仙人様から借りた皿を一枚割ってしまった。
皿一枚ばかいいわ、だまって返しておけばわからないと思って、次の朝その穴場へありがとうござあした、と返したとさ。
それから一ヶ月か二ヶ月だかたって、村に不幸ができた。
そこでまたお膳やお椀など借りに行ったところ仙人のお告げがあって「おまえたちは悪でいけない。
この前のときどうして正直に皿を割ってしまって申しわけがなかったと、あやまらなかったか。」といって、その後は何度村人が頼みに行き、相談にいっても、なんの声もなく、いつとはなしに姿を消してしまったとさ。
そればっかし。


注:この岩穴は明治四十年頃までは、出入りができたというが、その後何回も大あれがあって、今では穴はうまり、沢になっているという。
これと同じような話に「筏が池の滝」の話がある。同じすぢ書きの話である。

出典:小川村誌[昭和50年(1975)10月15日発行]

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