小川村の昔話(ピピンピヨドリ)
ピピンピヨドリ
むかし昔ある所に、よい爺さんと悪い悪い爺さんがあったそうな。
ある日、良い爺さんは山の畑へ仕事に行って、お昼になったので、畑の端に鍬をたてておいて、むすびを食べていると、一羽のとてもきれいな雀くらいの鳥が来て、鍬の柄にとまって爺さんの方を向いていたので、爺さんは自分のむすびを少しわけてやると、小鳥は喜んでたべていたが、段々なれて爺さんの肩や手にとまるようになった。
面白がってかまっているうちに、どうした拍子か、爺さんの口から腹の中に飛びこんでしまった。
さあ爺さんは驚くまいことか、直ぐ立ち上がって見たが、どうにもならない。
裸になって見ると、臍のところ(またはわきの下とか横腹)へ、さっきの小鳥のしっぽがでていた。
そこでそれを引っぱってみると、不思議にもとても良い声で「ピピンピヨドリ、ゴヨノサカズキ、チットモッテコイ、ピンチャンコロリン。」と鳴くのである。
そこで爺さんは早速家に帰って婆さんにもやって見せたりしていた。
この事がにわかに有名になって殿様に聞えて、殿様が是非ききたいというので、爺さんをお召しになった。
そこで爺さんが殿様の前でやって見ると、なるほどとてもいい音をして鳴いたので、大変おほめにあづかり、沢山なごほうびをいただいた。
これを聞いた隣の慾深爺も、おれも一つもうけずと思って、お昼をもって、山の畑へ行って、鍬を使っていた。
お昼になったので、鍬を畑のくろに立てて、持って行った握りめしを食べていると、前に立てておいた鍬に小鳥が来てとまった。
そして爺さんの飯をほしそうに見ていたが、爺さんは少しもくれずみんな自分がたべてしまった。
そして小鳥のすきを見て、小鳥をとらえて呑んでしまった。
バタバタするのをやっとの事で呑んでしまうと、臍のところへしっぽが出たので、これはしめたというわけで、早速山の畑を下り、御殿近く行って、
「鳥の声を出す爺でござい。鳥の声を出す爺でござい。」と大声で呼んで行くと、
やがて殿様のお耳に入り、呼びこまれ、それではやって見よ、といわれて殿様の前でやると、いい声は出ないで、屁のようなきたない声しか出なかったので、大変殿様のお怒りにふれて、さんざん叱られて、ほうほうの体で逃げ帰ったとさ。
これは夏和で取材したが村内各部落に同じすぢ書きの話がある。
出典:小川村誌[昭和50年(1975)10月15日発行]